フォトンベルトを抜けた先

自作小説をぼちぼちと。

P.S.E.

#05 世界樹

ドアミラー越しに後方を確認するが銀色のセダンはおろか、何かが追ってきている気配がない。まさかこの距離で撒けたわけでもないだろう。しかし、その後も誰かが追ってくることはなかった。霊弐がほっと胸をなでおろすと、運転席の女、蕗薹央(ふきのとうあ…

#04 追手

助っ人を呼ぼうと思って。そう言いながら起き上がって、霊弐は端末を操作する。すると、彼女は霊弐の腕を掴んで言った。 「やめて!」 霊弐を信用して来た、と彼女は続けた。他の人間は信用できない、と。霊弐は別段隠れて探偵をしているわけではないが、自…

#03 不安

首が痛くなるほど高い山を見上げ霊弐は、自室の前の通路の柵にもたれ掛かる。霊弐の家は3階建てのアパートの一室だ。築年数は古く、今世紀の初めに建てられたらしい。ILHENの管理の下、人々の多くは都心部の居住区へ移住してしまったため、このアパートも3階…

#02 彼

ILHENの管理下に置かれたこの街で、実は管理の目を逃れる方法があるらしい。この街は周囲を山に囲まれているが、その山の向こうへ行った者は誰もいないという。山の向こうに何があるのか、これを知る者も誰もいない。この街ではILHENの管理が行き届いている…

#01 白い影

4月。ああ、別に厳密に太陽の位置がどうとかで決まっているわけではない。暦の上では、4月に当たるというだけである。人類を悩ませた21世紀のエネルギー問題は、太陽光発電に代表される再生可能エネルギーへの全面的な切り替えによりほぼ解決し、安定しなか…

「P.S.E.」

「P.S.E.」 ピーセと読みます。 現在連載中です。SFと呼ばれる分類になっているかと思います。シリーズをカテゴリ分けしておりますので、ご覧ください。